「Tegra 4」と「Project SHIELD」の意味 [ゲーム機]
「Tegra 3」の後継モデルであるハイエンドモバイルプロセッサ「Tegra 4」が、Internatinonal CESを前に発表になった。
NVIDIA、クアッドコアCPUと72コアのGPUを搭載する世界最速モバイルプロセッサ「Tegra 4」を正式発表 : ギズモード・ジャパン
- 28nmプロセス ・CPU数は4コアのまま、ARM Cortex-A15コアにアップグレード
- 72 GeForce GPUコアで、Tegra 3比で6倍のグラフィック能力
- 4G LTE「対応」(オプションの独自ソフトモデムチップi500)
- 見た目を維持しながらバックライト輝度を下げ、バッテリー消費を防ぐPRISM 2技術
- 4K UHD動画デコード対応
- 消費電力がTegra 3比で45%減
といったところが主なスペック。 消費電力をさらに下げながら、3Dグラフィックス能力と、動画対応が、大幅にアップグレードされた印象だ。
今回、話題になったのは、「Tegra 4」搭載の携帯ゲーム機「Project SHIELD」が発表されたことだ。
いきなり出たー! NVIDIA、Tegra 4搭載で4K出力が可能な携帯ゲーム機「Project SHIELD」を発表 : ギズモード・ジャパン 【笠原一輝のユビキタス情報局】ポータブルゲーム機「SHIELD」にかけるNVIDIAの本当の狙い
- こちらの特徴は次の通り。
- 5インチ1280×720ピクセルのHDディスプレイ搭載
- マルチタッチ対応ディスプレイ
- 反響を利用するオーディオシステム
- micro SD対応
- 4K解像度(3840×2160)対応HDMI出力
- Android 4.1 Jelly Bean 搭載
- NVIDIA GeForce GTX GPUを搭載するPCから、ワイヤレスでゲームをストリーミングプレイ可能
- USBインタフェース
- 無線LAN内蔵
ただ、今回、ゲーム配信のエコシステム構築についての言及がない。
NVIDIAのTegraZoneのゲームストアで独自コンテンツは以前から配信しているが、それがそれほど人気がある訳でもない状況で、新たな施策もないので、本気度が感じられないのだ。
基本LSIメーカーのNVIDIAだけに、本気で製品としてのゲーム機を発売する気があるのか、NVIDIAにそんなビジネスノウハウがあるのか、疑問が残る。
既にGoogleと話がついていて、Air Playで専用アプリを配信し、NVIDIAにもソフト売上の分け前が回るスキームが考えられている可能性もあるが、だったらGoogleとの共同発表にしたはずだろう。
となると、「Project SHIELD」は、「Tegra 4」の能力を生かすアプリケーション開拓のデモという色彩が強い可能性がある。 というのも、「Tegra 4」のスペックを見る限り、その方向性についてかなり苦心した様子が伺えるからだ。
「Tegra 5」も実はどう進化するか全く明らかでないのは、そのせいもあるだろう。 たとえば、今回、CPUコア数は増えず、単一コアの性能向上に注力したのも、現状のスマフォ、タブレットのOS、アプリでは、これ以上、コア数を増やしても性能向上につながらず、それよりは少しでもCPU性能を上げた方がいいと、判断されたのだろう。
ただ、コア性能の向上はすぐにサチるため、A15コア以降、今後は大幅な性能向上は見込めない。 また、現状のアプリを見ると、重い処理はクラウド側に持たせるのがモバイル端末の定石であり、そこまでCPUパワーは要らないものが多いし、逆に、CPU能力が制約になっては、アプリ市場は広がらない。
すなわち、スマフォやタブレットでは、通信速度が劇的に向上しない限り、これ以上CPU性能を上げてもオーバークオリティで、あまり意味がない可能性があるのだ。 NVIDIAとしては、その行き詰まりを打破するために、NVIDIA側の持つリソースを生かし、3D性能、動画性能の向上に特化し、注力したように見える。 現状、4k解像度に対応しても、今のタブレットのディスプレイ解像度、フラッシュのストレージ容量や、ネットワーク速度では宝の持ち腐れで、実用性は皆無といっていい。
3Dも、突出した性能だけに対応したゲームというのは、市場も小さくなるため、ゲームベンダーも作りたがらないだろう。 すなわち、市場はまだないのだ。 しかし、NVIDIAとしては、「Tegra 4」を売るためには、今のスマフォ、タブレットにはない新たなニーズを創生する必要があったのだと思う。 それを具体的に目に見えるようにしたプロトタイプの一つが、ポータブルゲーム機「Project SHIELD」なのではないだろうか。
そして、もうひとつ「Tegra 4」を採用して欲しい市場が、おそらく4Kディスプレイを採用した「スマートTV」と呼ばれる市場なのではないか(こちらはまもなくGoogleから発表があるみたいだな)。
「Tegra 4」のメインターゲットは、既にスマフォ、タブレットではない可能性が高く、使われても、ハイエンドモデルだけだろう。 しかし、一方で、下手をすると現状の3DS、PS Vitaなどのポータブルゲーム機や、VIERA Connect、アプリキャストなどの中途半端なスマートテレビのビジネスモデルを破壊し、再構築するインパクトを秘めている気がする。
人気ブログランキングへ |
スポンサードリンク
コメント 0