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TPP交渉の大筋合意について(2) [金融・経済]

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著作権関連の話題が長くなったが、そのほかの合意事項についても、簡単に触れておきたい。

NHK NEWS WEB 今さら聞けないTPP 基本がわかる10のカード

2.新薬の保護期間は、8年にすることで合意
これについては、マスメディアでは、日本でも5年を主張する国を擁護する論調が目立ったが、ちょっと違うと思う。
薬剤師の私の奥さんの意見では、最近の新薬は開発費がどんどん増大していて、それをねん出するために製薬会社の合併や連携が相次いでいる事情があり、保護期間の短縮は、新薬開発の沈滞を引き起こす可能性があるという。
新薬の認証試験には、1国で3年程度掛かるのが普通で、もし本当に保護期間が5年になったら、製薬会社が独占利益を上げられるのは実質2年程度となり、コストに見合わない大半の新薬開発は止めざるを得なくなるといのことだ。
なので、認証試験期間の3年をプラスして8年というのは、米国や日本にとっては、ぎりぎりの譲歩だと思う。
そのことを何も考えずに、心情だけで保護期間の短縮を主張していたメディアは、日本の利益など何も考えていない馬鹿者だと思う。

3.乳製品については、ニュージーランドに対して日本が特別輸入枠を設ける形で決着
最終段階でニュージーランドが主張し始めた乳製品の輸入拡大については、ニュージーランドとの個別交渉で、輸入枠を拡大することで解決できたようだ。
国内のバター不足問題は、酪農業離れが原因と言うが、それに対し酪農関連団体は言い訳をするだけで何ら解決案を示さない以上、現実に「絶対量が足らない」という現実を解決するために当事者能力はないと判断せざるを得ないし、国として輸入枠の拡大を含めた解決方法を考えるのは当然のこと。なので、この輸入枠拡大には賛成だ。
チーズなんかも、欧州に行くと、日本に比べて、美味しいチーズが格段に安く、種類も豊富であることに愕然とする。平均賃金が安い発展途上国ではなく、欧州先進国でも安いのだ。日本の酪農業の方は、そのことをどう説明するのだろうか?

4. 牛肉、豚肉の関税引き下げ
牛肉の関税は現在38.5%なのを、即時27.5%に引き下げ、10年で20%に、16年目以降は9%に段階的に引き下げる。
豚肉は、安い肉には現在1kg当たり482円の関税がかけられているが、これを即時125円に引き下げ、5年目に70円、10年目以降には50円に引き下げる。
ただ、急激な輸入増を抑え、国内産業を保護するため、一定の輸入量を超えると関税を引き上げる「セーフガード」制度を導入する。ただし、これも将来は廃止が前提となるため、長期的には、国内畜産業には打撃になるだろう。

5. 自動車の原産地規則の部品調達率は55%に決定
これは、TPPに参加する国で生産された部品をどれぐらいの割合使えば自動車の関税をゼロになるのかの基準となる。日本は、TPP非参加のタイからの部品輸入が多く、厳しい数値のため、世界戦略の変更が必要らしい。
一方、日本から輸出している自動車部品への関税については、アメリカが即時9割近い品目で撤廃され、残りも一定期間ののち撤廃されるため、米国やメキシコに巨大自動車工場を抱える日本メーカーにとって、コスト削減にはありがたい筈だ。
今回のTPPで一番恩恵を受けるのは自動車業界なのだから、そこから何らかの追加徴税をして、一番被害を受ける農業への対策資金を生み出すのが筋だと思うが、安倍政権はどこまで考えているのかな。

こうした外交交渉では、一国だけがメリットを享受するということはあり得ない。
今回のTPP妥結案も、日本が「全敗」というのは言い過ぎにしても、国内的には、メリットを受ける産業もあれば、デメリットが大きい産業もあるのは間違いない。
ただ、TPPの合意事項は、実際には、各国の国内事情や既にある関連法規を見ながら、これから国内で法律を作っていくことになり、そこで工夫のしどころはいくらでもあるはず。
安倍政権が、メリットのある産業から如何にして税金を多めにとり、デメリットが大きい産業に対して、国内法で、どういう救済対策や、業態転換政策を行うつもりなのかが、次の注目ポイントだろうな。

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