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吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞 [科学技術]

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ノーベル化学賞が「リチウムイオン電池の父」に授与されることの価値|WIRED.jp

スウェーデン王立科学アカデミーが、10月9日、ノーベル化学賞の受賞者を発表した。
受賞者は、「リチウムイオン蓄電池」を開発した、米テキサス大学オースティン校のグッドイナフ教授と、米ニューヨーク州立大学ビンガムトン校のスタンリー・ウィッティンガム教授、旭化成の吉野彰・名誉フェローの3氏だった。

こういうニュースでは、日本では、どうしても日本人を中心に取り上げがちで、それがニュースの本質を歪めてしまったり、変な民族主義をあおってしまう弊害があり、気になっているので、ここは、フラットに取り上げたい。

CNN.co.jp : 97歳のグッドイナフ教授、最高齢のノーベル賞受賞者に

まず、今年の化学賞で、世界的に一番話題になっているのは、グッドイナフ教授が、97歳という最高齢でノーベル賞を受賞したことである。
そもそも、ノーベル賞は、亡くなると受賞資格を失ってしまうので、実際、これまでも「あの方が生きていれば、受賞したのに」という方は少なくないのだ。
グッドイナフ教授も、人より長生きしてでのノーベル賞受賞に、まさに「Good enogh !」なことだろう。

さて、ノーベル賞の発表で、複数人による受賞の場合、私が一番注目するのが、発表順と貢献度だ。

発表順は、受賞内容の核心に近く、賞への貢献度が高い順であると言われている(年齢順ではない)。
また、発表と併せて、その貢献度も発表されるのだが、どこのマスメディアもなかなかこれを記載してくれなくて、毎年オリジナルの情報を当たる必要があるが、

祝・今年も日本人がノーベル賞を受賞 素直に喜びたい | 新宿会計士の政治経済評論

こちらのサイトにも書かれていて、今回の場合、受賞者お三方の貢献度は、それぞれ1/3で均等と評価されており、この貢献度に応じて、900万クローナ(約1億円)の賞金が分配されるそうだ。

ノーベル賞の授賞者は、一つのテーマに対し、最大3名の授賞者が選ばれることがあるが、3名の場合、貢献度に応じて、メインの人が1/2で、他の2人が1/4に賞金が分割されることもあるが、今回は、3人の貢献度がほぼ対等とみなされた。
その中でも、発表された順番、グッドイナフ氏、ウィッティンガム氏、吉野彰氏の順に貢献度が高いと判断していることが分かる。

1970年代の中盤に、当時エクソンに勤務していたウィッティンガム氏が、初めて、金属リチウムを負極材として使う蓄電池を発明したが、これは反応を制御しづらく、爆発しやすい欠点を抱えていた。

1980年台に、当時オックスフォード大学のグッドイナフ氏の研究チームが、リチウムの安定した化合物であるコバルト酸リチウムを正極材として使うことで、金属リチウムを使うより、安全な電池を作ることができることを発見した。
ノーベル賞の発表で、グッドイナフ氏の名前がが一番最初に上がったのは、この正極材コバルト酸リチウムの発明が、リチウムイオン蓄電池の発明の核心だと判断していることを示している。

そして、旭化成の吉野彰氏の研究チームは、同じ1980年代に、負極材として、多孔性の炭素材料を用いることで、より安全で高性能な蓄電池を作れることを発見し、グッドイナフ氏が発見した正極材との組み合わせで、初めてリチウムイオン蓄電池の製品化の道筋を作った。

吉野彰氏の発明は、コバルト酸リチウムという正極材があっての発明ではあるため、発表順序的にも最後の並びとなった。
ただ、吉野彰氏の負極材の発明は、現在のリチウムイオン蓄電池に不可欠な要素であったこととと、その後も、製品としての安全性を確保するための機能性セパレータや、保護回路などの発明を行っており、貢献度上は3者は対等とみなす扱いとなったものと思われる。

ウィッティンガム氏の発明は、金属リチウムを使う蓄電池のさきがけではあるが、現在のリチウムイオン蓄電池につながるという意味では、吉野彰氏より技術的な貢献度は薄いかもしれない。
しかし、こうした研究の評価で一つ重要なのが、その論文や発明が、どれだけ多くの重要な論文や特許から参考文献として参照されているかだ。
その意味では、グッドイナフ氏の発明は、他の方より約10年古く、おそらく、その後のリチウムイオン蓄電池に関する研究論文において、最も根元になるウィッティンガム氏の論文や特許が多く参照されていることから、他の二人と対等に評価すべきと判断したのだと思う。

ともかく、吉野彰さんによる負極材の発明は、リチウムイオン蓄電池の根幹をなすものであるのは間違いなく、ノーベル賞の受賞は、至極妥当なものであり、おめでとうございます。

旭化成名誉フェロー 吉野 彰へのノーベル化学賞授与が決定 | プレスリリース | 旭化成株式会社

さて、吉野彰は、現在71歳だそうだが、今も、旭化成株式会社の名誉フェローの地位にあるそうで、会社としても、吉野氏を伝説的研究者として高く評価していることが分かる。

ただ、会社として気になる点が一点。

旭化成には、外に向けてその技術や製品をアピールする企業博物館みたいなものが、当然あるだろうから、そこで、さっそく吉野彰氏の業績について、展示を特集するのだろうな、と思って調べてみたのだが、

施設紹介|ベンベルグの世界|ベンベルグ|旭化成株式会社 繊維事業

宮崎県に「延岡展示センター」という、工場群の中に「旭化成グループの歴史や経営全体の姿、延岡・日向地区の事業活動の現状と地域社会との関係などを、総合的に紹介する」ミュージアムがある他は、

東京には、旭化成の本社がある日比谷三井タワーに「裏地ミュージアム+」という繊維素材に特化したミュージアムがあるだけ。
平日のみ「アパレル・小売・流通などの業界関係者」に向けて予約制で公開している、ジャンルに特化した施設だ。

旭化成は、現状、吉野彰氏の業績だけじゃなく、自社の開発した基礎技術に関し、広報展示する施設みたいなものを持っていないんだな。
革新的素材が命の会社なのに、これは意外。

今後、科学技術に疎いメディアからの、殺到する取材への対応も含め、何らかの分かりやすい広報展示施設を早急に作らないと、きっと大変なことになるぞ。

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