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総務省が「地デジの4K化」を検討 [AV機器]

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総務省が「地デジ4K化」検討に向けた技術募集。「現行地デジを維持しながら4Kを」 - AV Watch

総務省が、衛星放送に続いて、地上デジタル放送の4K化の技術検討を行うべく、有効と思われる技術手法の募集を行なうそうだ。

記事のように「4K化」と書くと少々語弊があって、総務省としては、「現行の地デジ放送はそのままみられること」という条件の通り、現在のフルHDの地デジ放送を、現行の地デジアンテナと地デジ対応テレビで見られる仕組みは維持することは大前提としており、過去の「地デジ化」ときにアナログ放送が廃止されて見られなくなったように、今の地デジ放送が見られなくなるわけではないからだ。

同様に、「ワンセグ放送についても原則維持」だから、ワンセグ放送も従来通り見られなければならないのだが、「原則」の文言が微妙で完全な否定ではない。なので、技術的にどうしても難しく、他のメリットが際立っていれば、その原則を外す可能性はあるだろう。

「地デジの映像・音声品質は極力維持する」という規定は、多少の劣化は許されるということでもある。これは、従来の地デジ放送のビットレートの一部を割いて、4k放送用のデータを流してもいい、ということを意味するものと思われる。

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なお、こちらの図を見る限り、地デジ4K放送は、既存の地デジ放送と別の内容ではなく、同じ内容を解像度が違う形でのサイマル配信するサービスとなる前提のようだ。
ということは、今の地デジ放送の画質で満足している(おそらく大半の)人には、全く魅力は感じない放送となるな。ただ、ワンセグ放送も、当初は地デジのサイマル配信限定だったのが、いつの間にか別の放送を流していいことに決まりが変わったので、4k放送も将来的にはフルHDの地デジとは別の番組が流れるようになるかもしれない。

「地上4K放送用の周波数帯及びチャンネル幅は、原則、現行の地デジと同一(使用周波数帯:470~710MHz 帯、チャンネル幅:6MHz)」という前提になる。放送エリアは、地デジの現状を維持せざるを得ないので、変調方式、変調パラメータは、変えられないだろうから、1チャンネルのビットレートは最大17Mbps程度。
4k放送には、H.265/HEVCでエンコードしても25Mbps以上のビットレートが必要と言われており、1チャンネルでの伝送は無理なため、2ちゃんねるを組み合わせて放送せざるを得ないだろう。

「4K放送用の周波数は、地デジが使用している周波数の削減や、両放送を同一帯域で使用できる手段の活用等を前提とすること」とあり、UHF帯の既存の空いているチャンネルを使用するのが前提だが、その制約の表現からすれば、既存チャンネルの移動もあり得そう。その場合、既存のテレビではチャンネルのスキャンのし直しが必要になると思うが、従来でも起きている事象なので、許容範囲か。

「地上4K放送の視聴を希望する視聴者は、原則、別途対応チューナー等を購入するだけで、視聴可能となること」については、既存のテレビのHDMI入力端子に、地上4K放送チューナーを繋げば、4k放送が見られる必要があるという意味だと思うが、フルHDのテレビに無理やり地上4K放送チューナーを繋いで、わざわざフルHDで見る必要はない(普通の地デジて見ればいい)だろうから、地上4K放送チューナーの出力は、4k伝送用に規定されたHDMI2.1で、著作権保護方式はHDCP 2.2対応が必須ということで決着しそうだ。

平成28年度第2次補正予算において実施する「地上4K放送等放送サービスの高度化推進事業」の一つとして、募集した技術をもとに、調査研究や実証実験を行うようで、事業の実施期間は、約10カ月間とのこと。
また、「事業期間の途中及び終了時において、提案の方法による地デジ及び4K放送の映像・音声のデモンストレーションが可能なこと」とあり、おそらく秋のCEATECあたりで、何らかのデモができることが前提となりそうだ。

上の図には、3つの方式が例示されており、それぞれ、

・方式1は、「2K信号と4K信号とを同じチャンネルに混在させて送信」
・方式2は、「2K信号と補完信号を同じチャンネルを使って送信」
・方式3は、「補完信号のみ、別の伝送路を利用して送信」

と説明がついている。
もちろん、このイメージに捕らわれなくてもいいという解説は付いているものの、総務省としての意思が絵に見て取れる。

方式1は、2K信号と4K信号は独立していて、1チャンネルに多重化されるイメージだ。ただ、地デジ1チャンネルに4K放送が収まらないから、もう1チャンネル確保し、そちらも併用する方式となるのだろう。
現状、地デジの実効ビットレートは15kbpsと言われているが、TOKYO MXのように、MPEG-2コーデックアルゴリズムを改善し、HD+SDの2チャンネルを同時放送している局もある。
このケースでは地デジは12Mbps程度とみられ、画質の劣化は多少あるが、これが「映像・音声品質は極力維持」されている範囲と判断されれば、ビットレートを下げれられ、その分を4k用のデータに振り向けられる。
ただ、その分が3Mbps程度だとして、もう1チャンネルで17Mbpsの4Kデータを流せるとしても、併せて20Mbps程度しか確保できず、4K放送に必要とされる25Mbpsには届かない。
ただ、地デジでも、フルHDとは言いながら横方向の解像度は1440ピクセルしかないし、4Kのネット動画のビットレートはもっと低いものもあり、どこかで妥協の余地はありそうだ。

方式2では、補完信号という新しい表現が出てくるが、これは、「単独としては映像信号として成り立たないが、2K信号と組み合わせてデコードすると、4K動画を再生できるような信号」という意味だと思われる。
現状の地デジはMPEG-2というコーデックを使用しており、4K放送用に規定されたH.265/HEVCというコーデックは、そうした補完信号と言えるような差分情報を生成できるようなことは全く考慮されておらず、地デジを従来のテレビで見られるようにする前提である限り、これは技術的な解はないように見える。
唯一あるとしたら、配信側で、フルHD映像をベースに、4Kへの超解像処理の補完信号を生成し、それを元にテレビ側でフルHDの地デジデータ+超解像処理の補完信号で、4K映像を表示する方式だろうか。
その場合、H.265/HEVCとは、また別のコーデックを新たに規格として規定する必要が出てきそうだ。また、現状の地デジでも、動きが激しい場面でブロックノイズが発生している現状で、そこに超解像処理を行って4K化しても画像が破綻するのは目に見えている。
現実的には、4Kらしい画質を維持できるかは、かなり難しいと思えるな。

方式3は、補完信号を別の伝送路を利用して送信としているが、図を見ると「別の伝送路」はインターネット回線を意味するようだ。
これは、地デジデータ+超解像処理の補完信号で4K映像を表示という意味では、方式2とほぼ同じで、補完信号のみをインターネット回線で取得する点だけが違う。
ただ、この方式、「インターネット回線だけでよくないか?」という疑問が避けられない。
もちろん、地デジ信号を利用すれば、インターネット回線の必要なビットレートは下げられるだろうが、既にネット動画配信でも、4Kコンテンツが出始めている今、わざわざこのような複雑な方式を取る意味があるようには思えない。

ということで、提示された3つの方式の中で、現実的な解は方式1ぐらいしかないように思えるな。

これらを超える画期的な提案が、どこかのメーカーや大学から出てきたら、「日本も捨てたもんじゃない!」と思えるかもしれないが、AV機器を自社開発し続けている日本メーカーが、実質的にパナソニックとソニーだけになってしまった今、それだけの技術力は日本にもうないんじゃないだろうか。

ひょっとして、黒船のGoogleあたりが、自社のAI技術を利用した超解像処理方式を提案してきたりして?
今ならあり得るかもね。

関連記事:
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